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第2章
より高度なスキーテクニック

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2-1■ウェーデルンはパラレルターンの延長上にある。
 
 憧れのパラレルターンに対し、『上級者の証』とも言えるウェーデルン。原語では「犬のしっぽ振り」という意味があり、スキーを左右に振り(回し込み)ながら、上体はまっすぐ下に向かって滑り降りていく様は、まさに犬がしっぽを振るようで、言い得て妙である。日本語では「連続小回りターン」とも呼ばれている。
 上級者への関門となるこのウェーデルンは、しかしながら、パラレルターンの延長上にあると言っても過言ではない。要するに、この技術の最大の問題点は左から右、右から左へのターンの切り換えの早さにあると言えるからである。
 「シュテムターンとパラレルターンの違いはここだ」の所で説明したように、次のターンの外スキーになる山側スキーの山側エッジに素早く体重を移動さす事、さらに素早い動きに対応できる交互操作(前述)を用いればこの切り換え部分の問題はほとんど解消するのである。
 ただし、それらをマスターした上で、さらにプラスアルファの「コツ」を憶えればより確かなものにできるだろう。また、スピードを追求した切れるウェーデルンに対し、「スピードを制御しながら急斜面を安全に滑り降りる」という目的に合わせたスピード制御のウェーデルンもあるが、これについて第3章の『コブ斜面』の項で詳しく解説する。
 さらにより難度の高い、深回り(よりターン半径が小さい)のウェーデルンについてもチャレンジしてみよう。
 
テクニック7『ウェーデルンはネコ背で滑る』
 ウェーデルンでは前述したようにターン左右の切り換えを素早く行うことが必須となるが、それをより完璧にこなすためには左右だけではなく前後のバランスも崩さないように滑る必要がある。
 一般的に、後傾姿勢になってしまうと外スキーへの荷重がおろそかになり、スキーの暴走を生じる事が多い(一般的にと断わったのは、後傾姿勢で滑る事も可能だからである。後傾姿勢の良し悪しについては後で考えてみたい)。
 さて、スキーの暴走を止めるにはどうすればよいのだったか憶えておられるだろうか? 一番最初の項で述べた「ターン内側の肩を外スキーの上にかぶせるようにする」というテクニックを思い出していただきたい。ウェーデルンではターンとターンの間隔が短いため、片方ずつ肩をかぶせるのではなく、「両方同時に肩を(前に)かぶせたまま滑る」と考えてもらえれば分かりやすいだろう。要するに『ネコ背』姿勢で滑る事になるのだ。
 このネコ背姿勢というのは非常に有効な姿勢であり、スキーだけではなく様々な場面で活用できる。滑り易い雪道を歩くとき、山登りの時の下り坂や急斜面をかけ降りる時など、バランスを崩さず楽に行けるのだ。私はスキーでこの姿勢を身につけたおかげで、そういう後ろへ転び易い場面では無意識のうちにネコ背姿勢になって転ばずに通過できるようになった。京都に愛宕山という標高900mほどの山があるが、ある時必要に迫られ山頂から山麓まで登山道を駆け下った事があったが、その時もこの姿勢が身に付いていたおかげで転ぶこともなくわずか30分程で下り降りることができたのだった。
 スキーではパラレルターンなど比較的楽に滑れる時にはあまり必要ないが、前後のバランスをシビアに保つ必要のある急斜面でのウェーデルンや、パラレルターンでも高速、急斜面と、条件がシビアになるにつれてネコ背姿勢をとるようにするといいであろう。
 
 
2-2■高難度ウェーデルン・連続深回りショートターンを成功させた2つの方法
 
 一つの事ができるようになると、さらに難しい技術にチャレンジしたくなるものだ。ウェーデルンも、浅いターンの連続から、深いターンの連続へとレベルアップを目指す。
図13 浅・深・ロング・ショート  (ショートターンとは1つのターンの滑走距離が短いもの。反対に長いものはロングターンと言う。また、同じ滑走距離のターンで比べると、ターン半径が大きいものを浅いターンor浅回りと呼び、ターン半径が小さいものを深いターンor深回りと呼ぶ【図13】。ここでは、このなかで最も難易度が高い深回りのショートターンにチャレンジする)
 さて、回転半径が小さくなってくると何が難しくなるかと言うと、色々ある中でも『身体の傾きを切り換える』操作が非常に難しくなる。深いターンでは体軸をより大きく内側に倒してターンすることになるが、次のターンではそれと全く逆方向に体軸を大きく傾けねばならない。それだけに体の動きが大きくなり、バランスを崩し易くなるからだ。しかも、それは体の左右の動きだけにとどまらない。左右よりももっと難しい前後のバランスが大きく崩れてくるのである。しかも斜面が急になればなるほどその傾向が強まるのである。その理由は後で説明するが、とにかく前後左右のバランスを保つため、体を能動的に傾けていく必要があるのだ。
 さて、私自身もこの課題に挑戦し、失敗の連続の末、連続深回りショートターンを成功させる方法を見つけた。それは次の2つの方法であった。
 
テクニック8『抱え込み押し出しによるターン』(「抱え込み送り出し」とも言う)
図14 抱え込み押し出し  『抱え込み押し出しによるターン』とは、ターンの切り換え時に両脚を抱え込むように素早く曲げ(同時に上体をかぶせるように低くし)て抜重し、エッジを切り換えて次のターンを始動するやり方である。ターン前半部は、スキーを押し出すように脚を伸ばしながらターンしていく。スキーの方向が最大傾斜線を向く頃(一番下を向く頃。ターンのマキシマムとも言う)に最も脚が伸び、ターン後半部は脚を伸ばしたままターンを続け、再びターン終了時に素早く曲げて抜重、切り換えに移る、というのが一連の操作である【図14】。
 一昔前まではスキーの技術書には大抵紹介されていたオーソドックスな技術で、昔活躍したハンスヒンターゼアーというレーサーは、この技術を駆使した滑りでスキー界のトップの座についた、かなり完成度の高いテクニックだと言える。しかし、彼の衰退と共に、この技術はあまり見られなくなってしまうのである。しかし、スキーの技術の根本はそんなに変わるわけではないので、それをよく見極め、使いやすくて優れた技術はどんどん自分のものにしていくべきである。私自身は、この抱え込み押し出し技術をあまり用いないが、スキーの返りのいいショートターンをした時などは、自然にこの動きが出てしまうものである。
 ではなぜこのやり方で連続深回りショートターンが成功したのか考えてみると、体軸を大きく左右に傾ける時に、この方法では腰を中心とした動きになり、重心の移動が小さくてすむからである。しかも、切り換え時は上体をかぶせるようにして前へもっていき、姿勢も低いので前後のバランスが崩れにくいのである。
 さらにこの技術の長所と短所をまとめておくと、
 
〈長所〉
 ・素早い切り替えができる。
 ・重心の移動が少なくて済む。
 ・アイスバーンから深雪まであらゆる斜面状況に対応できる優れた技術である。
 ・どちらかというとショートターンに向いている。
 
〈短所〉
 ・滑る姿勢が窮屈である。
 ・上下動を利用した大きな加圧操作ができない。
 ・大きなターンにはあまり向かないと思われる。
 
となる。ただ、私自身まだまだこの滑りを追求してないので真の姿はまた別の所にあるかもしれない。興味のある方はこのテクニックの真髄に迫ってみるのも面白いだろう。
 
テクニック9『ターン切り換え直後、外脚の膝をしっかり伸ばし前傾姿勢を作る』
 もう一つ、連続深回りショートターンを成功させたのは、ターン切り替え時にひざをしっかり伸ばして立ち上がる滑り方をした時であった。ひざをしっかり伸ばして立ち上がるとどうなるか、これはスキー靴を履いてその場で実験してもらいたい。
図15 膝の曲げ伸ばしによる前傾姿勢・後傾姿勢  やってみると分かると思うが、まず、ひざを曲げる。すると腰の位置は靴の位置より後ろへいく(腰掛け状態。後傾)【図15】。そこからひざを伸ばしていくと、腰の位置はだんだん前へ移り、完全に伸ばしきった時には靴の位置より(靴の上を越えて)前にでているはずだ(前傾姿勢)。
 要するに、ターン切り替え時にひざをしっかり伸ばすと前傾姿勢になるのである。この前傾姿勢から、これから始めるターンの内側のスキーを持ち上げておいて、一気に内側へ体を倒して行く(バイクや自転車でコーナーを曲がるように)と深回りのショートターンができる。内スキーを高く持ち上げておかないと、一気に体を内側に倒した時に内スキーが雪面について、その瞬間、外スキーにかかっている圧力が弱まり、深回りのターンは失敗する。
 さて、このターンが示唆するものは次のようなことである。それは深回りのショートターンをする時に特に気を付けなければならないのは『左右のバランスより前後のバランスである』ということである。そして特に『ターン切り換え時に前傾する』という操作が大切なことを物語っている。
 では、なぜ前傾をしっかりすれば深回りターンが成功するのであろうか? 次にこれらの理由について考えてみたい。
 
*斜面変化と前傾・後傾姿勢
 よく「後傾姿勢」だと指摘されるスキーヤーは多いと思うが、さて、後傾姿勢はどうして悪いのだろうか?
 実際、緩斜面では後傾姿勢でも滑れるのだが、だんだん斜度が急になるにつれて難しくなり、急斜面では後傾で滑ることは即失敗につながるだろう。また、同じ斜面でもターンとターンの間隔が広いロングターンでは後傾で滑れても、間隔の短いショートターンになるにつれて滑れなくなる。さらに、浅く回るターンでは後傾で滑れても、深く回るターンでは後傾で滑れない、というように滑走条件が厳しくなるほど後傾姿勢で滑るのは難しくなるのだ。
 では、その理由はいったいなんだろう? いろいろ理由はあると思われるが、まず第一に、左右のバランスをとったり、様々な操作を行ったりするにも、体勢が中立の位置にあればやり易いのはごく自然なことである。その体勢が多少前後にずれても操作の支障にならないが、前後に大きく傾くと操作がやりにくくなり、素早い切り換えなどには対応できなくなるだろう。
 第二に、スキー板に体重をかける時、体重がブーツの中心部、即ち足の土踏まずあたりに落ちるようにかけるのが最も効率の良いかけかたである。極端な話し、うんと後傾すると体重はスキーのテール部にばかりかかり、トップ部が浮いた状態になってくる。スキー板を制御する基本はしっかりその板に体重をかけることにあるから、後傾過度や前傾過度は望ましくないのである。
 そして次の点が非常に大事なのだが、少しくらい後傾になっても大丈夫と思って滑っていても、急斜面になればなるほど、また、ターンの難度が高くなるほど前後のバランスが大きく崩れやすくなるという点である。だから、少しの後傾で滑っていてもそこでは大きく増幅されて極端な後傾に変わってしまうのである。次にその理由と対策について考えてみよう。
図16 斜面変化と前傾姿勢・後傾姿勢  まず、直滑降で緩斜面から急斜面へ滑り込む時の事を想定してもらいたい。緩斜面から急斜面へ入った瞬間、上体は後ろへ大きく遅れることは誰でも想像できるだろう【図16】。この場合、急斜面へ入る直前に上体を前へ倒しておけば(前傾姿勢)、急斜面に入ったとたん前傾が戻り、中立の位置を保つ事ができる。
 反対に、急斜面から緩斜面へ入る時には上体は前へつんのめるだろう。だから、やや後傾姿勢を作ってそれに備える。そうすると緩斜面に入った瞬間に中立の位置に戻る事ができるのだ。
 斜面変化に対応してあらかじめ前傾、後傾を意識的に作る事は理解していただけたと思うが、実は斜面変化のないゲレンデを滑る時も、一つのターンの中で斜面変化を体験しながら滑っているのである。
図17 1つのターンにおける斜面変化  一つのターンの前半、中盤、後半を考えてもらいたい。ターン前半では斜面に対しやや横向きになっているためスキーの斜度はゆるやかになっている(真横に向くとスキーの斜度は0度になる)。中盤では斜面の真下に向くので最もスキーの斜度が急になる(この時のスキーの斜度は、ゲレンデの斜度と同じになる)。後半、再び横に向いてくるのでスキーの斜度はゆるやかになる【図17】。
 要するに、斜度が一定な斜面を滑っていても、ターン前半から中盤にかけては緩→急へと斜度が変化し、中盤から後半にかけては急→緩へと変化するのである。だから、『ターン前半では意識的に前傾にする、後半ではやや後傾にする』必要がある。そうすることで中立のポジションが守られるのである。
 さらによく考えてみると、緩斜面でのターンでは前半、中盤、後半の斜度変化は小さいのに対し、急斜面でのその差はかなり大きくなる。例えば、10度の緩斜面では、ターン前半後半で真横を向いていた(斜度0度)としても、中盤は真下に向くから10度で、その差は10度にしかならないが、30度の斜面では同様にその差は最大30度にもなるのである。だから、『斜面が急になればなるほどターン中の斜度変化が大きくなるので、前後のバランスが大きく崩れやすくなる』のだ。それを防ぐためには『ターン前半部であらかじめ前傾姿勢をとる』必要がある。
 また、浅回りのターン(ターン前半後半であまり横へ向かない)より、深回りのターン(ターン前半後半でしっかり横に向く)の方が斜度変化は大きくなる。即ち『浅回りターンより深回りターンの方が、前後のバランスが崩れ易く、ターン前半部でより大きく前傾姿勢をとる必要がある』のである。
 ターン後半部で後傾姿勢をとることも同様に急斜面、深回りとなるに従って強くする必要がある。が、後傾姿勢はあまり意識しなくても得意な人が多いから、特に注意しなくてもできるのである。
 
*前傾姿勢は膝を伸ばすことによって作る。
 先に述べた様な理由で、ターン切り替え時に後傾姿勢から前傾姿勢へと切り換えなければならない。しかも斜面が急になればなるほど、ターンが深くなればなるほど、後ろから前へもっていく運動量が大きくなる。「私にはとても無理だ…」と不安になる必要はない。それを可能にするのが『膝を伸ばす』という操作なのである。
図18 膝を伸ばして前傾姿勢を作る  一般的には「立ち上がる」と表現されているが、そう聞くと膝よりも腰の関節を大きく伸ばしてしまう人が多い。ところが、腰を伸ばすとかえって上体が後ろへ移動するので後傾がますます強まってしまう。反対に『膝を伸ばす』という意識でやると、先にも述べたが、腰の位置が前へ移動し前傾姿勢がとれるのだ【図18】。
 膝を伸ばす時は、体重を山側のスキー(次のターンの外スキー)にかけて、『山側の膝を伸ばす』と憶えておいて欲しい。(ただし、ターン後半に谷側の膝を伸ばすというテクニックもあるので後で説明する)。
 エッジを切り換えるタイミングは「最初山側(小指側)エッジに乗っているが、膝を伸ばし始めて間もなく切り換え始め、膝を伸ばし終わる頃には親指側エッジに切り換わっている」位がちょうど良い。大きなターンではゆっくりとした膝の伸ばしになるし、小回りターンでは素早い膝の伸ばしが必要になる。
 この膝を伸ばす技術を身につけることにより、よりスキー技術は向上し、難度の高いターンが仕上げられるようになるのだ。
 (ただし、連続深回りショートターンの項目で最初に話した抱え込み押し出しの技術で滑る時は、膝を曲げたまま腰だけを曲げて前傾姿勢をとることになる。しかし、この技術では切り換え後すぐに膝・腰を伸ばしていくので後傾とはならないのである。これに対して、ターン中ずっと膝と腰を曲げて上体がつぶれた姿勢で滑っているスキーヤーは、前傾姿勢で滑っているつもりでも腰の位置が後ろへ引っ張られ、結局後傾姿勢で滑っていることになるので気をつけたい。)
 
 
2-3■カービングターン
 
*あなたはカービングターンを誤解していないか!?
 カービングターンというのは先にも述べたが、「曲がる」という意味の“curve”ではなくて、“彫る”という意味の“carve”からそう名付けられている。ここは一般スキーヤーに誤解され易いところでもあるので注意が必要なのだが、即ち、「スキーに強い圧力をかけて雪面をえぐるようにターンしていく」のがこのカービングターンなのである。
 今流行のカービングスキーというのは、従来のスキー板よりサイドカーブを強く(半径が小さい)設計したもので、滑走中エッジをたてるだけでサイドカーブに沿ったターンが楽にできるというものである。このスキーの意味するカーブはサイドカーブの“curve”なのである。即ち、カービングスキーをはくことでカービングターンが誰にでもできるというものではないので注意しておきたい。
 しかしながら、カービングスキーは一般的に短く作られているので強い圧力を生み出すのに適しており、しかもサイドカーブが強いためスキーのトップ(先)とテール(後部)でしっかり雪面を捉えてくれるので板をたわめ易いのである。だからしっかりした技術を身につけていれば、"カービングターン"がやり易い板だとも言える。
 しかし、サイドカーブが強過ぎると、スキーヤーが意図した以上にスキーが勝手に曲がろうとするので、かえって転倒の危険が生じる。このような板は非常に乗りにくい「おせっかいな板」となってしまう。
 また、カービングスキーでなくてもうまく設計された従来のスキー板は充分にカービングターンがやり易いものだ、という事も知っておくべきだろう。
 
 カービングスキーは、誰にでも比較的楽にターンができるので初中級者にもおすすめであるが、あくまで"カービングターン"の域に達するにはそれなりの技術を習得する必要がある。それは、次のような事を考えればよくわかるだろう。
 カービングスキーで滑りながら角付け(エッジを雪面にたてていく操作)をするとスキーはサイドカーブに沿って自然にターンしていく。しかし、それはあくまでそのサイドカーブの半径に沿ったターンでしかない。ではそれより深いターン(半径の小さいターン)をするにはどうすればいいのか?
 方法は2つである。1つは、ひねりを加えてスキー板をずらしながらより深く回る。もう1つはスキー板により強く圧力をかけて板のたわみを強くし、そのたわみに沿ってターンしていく方法である。前者が一般的なずらしを用いたターン、後者がカービングターンなのである。
 
*スキー板の選び方
 では、どういうスキーを選べばいいのか? というと、まず重要なのはその人の体重であろう。そして普段滑る時のスピードとターンの大きさ(大回りをやりたいのか小回りをやりたいのか)から推定される遠心力。体重が軽くて生み出す遠心力が小さい人はできるだけ柔らかい板、重くて遠心力の強い人はある程度堅めの板ということになる。しかし、一般的に柔らかめの板を選んだ方がカービングターンはやり易いのである。
 アルペンスキー界に金字塔を打ち立てたステンマルクが使っていたスキーはエッジに切れ目が入った(エラスティックエッジ)柔らかい板であったが、あの大きな体にしてそんなに柔らかい板を使っていたのである。彼のターンのマキシマム(旗門の横あたり)ではスキー板がグニャリと曲がっていたのを憶えている。どの選手よりもそのたわみ方が凄かった。レイクプラシッドでは女性で同じようにグニャリと板をたわめながらターンしていた選手がいたがその選手もみごと優勝した。
 そんな訳で、日本人ならとにかく柔らかい板を選べば間違いないと思われる。ただ、柔らかいと言っても、ボール紙の柔らかさとプラスチック板の柔らかさが違うように、要するにしなやかさ、返りの早さ、弾力性が求められる。板をたわめてみて戻す時に素早く返ってくる板がおすすめだ。
 サイドカーブの強さは、ウェーデルンなど小回りを目指す人にはできるだけカーブが強い(半径が小さい)ものを、また、大回りを中心とする人にはそんなに強くなくいものを選べばいいだろう。
 ただし、これらはあくまでも目安であって実際の板の良し悪しは、結局滑ってみないとわからないものである。特に板の安定性(短くても高速で安定して滑れるか)や、自分の想定以上にスキーが回り込んだり回り込まなかったり、スキーのトップがひっかかるように持っていかれるなど、様々な問題も滑ってみればわかるものだ。サイドカーブが強くても大きいターンで安定して滑れるようないい板もたまにはあるものだ。自分にあったいい板を選ぶには、できるだけ試乗会に参加してみることが必要となる。
 自分に合わない板で何シーズンも過ごしてしまうことを考えれば、自分にピッタリのスキー板に出会うために試乗会に参加することは、時間と費用がかかっても結局は安い物である。可能な限り参加することをお薦めする。
 
テクニック10『板の面に対して垂直方向に脚を伸ばす(蹴る)=しっかり体重をかけた状態で脚を伸ばす』
 さて、カービングターンの技術編であるが、すでに何回も書いているように、どうやって板に強い圧力をかけるのかという方法が焦点となってくる。だから片足1本に体重をかけたり、一旦持ち上げた内スキーはターンが終わるまで下ろさない、と言った技術が大切になってくるのである。こういった技術はすでに述べたので、ここではさらに『ターン後半部で脚(膝)を伸ばして加圧する』という方法を解説してみたい。
図19 板の面に対して垂直に  この操作を行う時の重要なポイントは『スキー板の面に対して垂直方向に蹴る(脚を伸ばす)』という事である。板の面に垂直な方向とは、圧力をかける上で最も効率的な方向だからである。言い換えると『板がたわむ方向に蹴る』と言うことである【図19】。(これらの操作の時は、内スキーの脚は曲げたままであり、まだ下ろしてはいけない)。
 よくターン後半に蹴りをいれて加速して滑ろうとしながらも、空蹴りなってしまう人がいるが、これは蹴る方向が横へ流れ過ぎているからである。『板がたわむ方向』とは、実際に皆さんが持っている感覚よりもっと上の方向に近いのである。横に蹴ってしまうと、蹴りの力は板をたわめようとする力より、板を横へずらそうとする力に変わってしまうのである。
 緩斜面での浅いターンなど、体軸がほとんど上を向いている時に、軌道修正と蹴り(加圧)を同時に行いたいような場合は、一瞬体を横へ傾けてから蹴る(横へジャンプする)といった配慮が必要となる。
 『板の面に対して垂直方向へ蹴る(脚を伸ばす)』という操作をもう少し言い換えると、『外スキーにしっかり体重をかけたまま脚を伸ばす』という操作に他ならない。
 失敗して空蹴りになっている場合は、踏み出すスキー板の方へ体重を移動させながら蹴ってしまっているので、蹴っている脚の方にはあまり体重がかからず、従ってスキー板をたわめる力にならない。加圧する時は『片足屈伸』あるいは『ジャンプ』する時のように、力をかけようとする板にしっかり体重をかけておいて脚を伸ばす動きが重要なのである。
 『体重を、たわめようとするスキー板にしっかりかけたまま』脚を伸ばす、あるいはジャンプする。頭の中では『板の面に対して垂直方向に脚を伸ばす(蹴る)』とイメージしながらやってみよう。そうすることにより、脚を伸ばした力は全てそのスキー板をたわめる力となり、雪面をえぐってスキーは返ってくる。それが即ちカービングターンであり、スキーがまるで生き物のように感じられる瞬間である。
 
*コラム4『手稲山での発見』
 私がこのテクニック10『板の面に対して垂直方向に脚を伸ばす』を発見したのは北海道の手稲山に一人篭って練習していた時である。北海道も5月になると日中は暖かく、雪が柔らかくなってしまう。そこで毎日午後3時頃になると次の早朝トレーニングのためのコースをセットし、きれいにデラパージュ(横滑り)をかけてコースを平にならしておくのであった。そうしておくと翌朝はカリンカリンのアイスバーンで練習ができるのであった。コースは緩〜中斜面に、中〜大回転位の旗門をセットした。
 そのコースを何度か滑るうちに、「おっ、これは!」と思える返りのいいターンが何度か混ざるようになった。ただ、最初は操作方法の違いが分からないので10回に1回そのターンがでるかどうかというような状況である。どうしてだろうとあれこれ考えながらスキーを担いで上がってまた滑る。そして、何本も滑るうちに、横へではなく、上の方向へ蹴った(伸びた)時にその返りのいい滑りができることを突き止めたのである。まさに感動の一瞬である。
 思い起こせば、その4年ほど前に奥志賀高原でゲレンデを滑走中、たった一度だけ偶然にその返りのいい切れるようなターンをしたことがあった。しかしそれは、たった一度だけしかできなかった幻のターンであった。今、その幻のターンを自分のものにしたのである。その後、「上の方に蹴る」は『板の面に対して垂直方向に脚を伸ばす』へと解釈を進化させ、さらには『しっかり体重をかけた状態で脚を伸ばす』ことに他ならない事も突き止めるに至ったのである。
 コツ(テクニック)というのはこういうものである。ただガムシャラに滑ってもそれは見えないのである。必死で考えて悩みながら試行錯誤する時、その扉が開かれるのだ。手稲の山ごもりは、そう言う点では非常に優れたトレーニングの場であったと言えるだろう。リフトはない、滑走距離が稼げる訳でもない。しかし、担ぎながら上がるので1本1本が真剣勝負なのである。上がる時は、どうしてだろうと無い知恵を絞りながら必死に考えるのである。こうして積み重ねた日々は、たった1カ月ではあったがいろいろなコツを開眼させてくれたのであった。その後、ニセコなどでリフトを使ったトレーニングも何ヵ月と続けたが、この時ほど多くの事を開眼することはできなかったのである。
 
テクニック11『脚(膝)を伸ばす時は、最後のもうひと伸ばしが効く』
 ターン後半部で脚(膝)を伸ばして加圧する時に「自分がこれでいいと思った点からさらにもうひと伸ばし(膝を伸ばしきるように)」してみると、その最後のひと伸ばしが非常に効果的であることがよくわかる。強い圧力を生むのはもちろんの事だが、膝を伸ばすことによって腰がグッと前へ送り出され次のターンへ非常にいいポジションで入っていけるというメリットがある。
 ただし、このテクニックは腰に負担がかかるので、年配の人や腰を痛めた経験のある人にはあまりおすすめできない。
 
テクニック12『ターン切り換え時、前のターンの外脚は伸ばし、次のターンの外脚はできるだけ曲げた状態で体重移動する』
図20 次のターンの外脚はできるだけ曲げて体重移動  さて、ターン後半部で(外スキーの)膝を伸ばすテクニックと、ターン前半部で(山側スキーの)膝を伸ばすテクニックはどのように折り合いをつければいいのか疑問に思う人もいるだろう。しかし、スピードにのってターンしている時は後半部ではかなり体軸が内傾しており(急斜面ではなおさらだが)、外スキーの脚を伸ばしきっても、山側(内)スキーは膝を曲げた状態で雪面に接することになる。その状態で体重移動するので、膝の曲がった山脚(次のターンの外脚)に体重がかかり、その脚を伸ばしていくことから次のターンが始まるのだ【図20】。
 さて、ターン前半で膝を伸ばしていくことにより「前傾姿勢ができる」ことは先に述べたが、ここでもう一つ重要な働きがある。それは、膝を伸ばしていくことによりそのスキーが加圧されるのである。加圧されることで板がよりたわみ、切れのいいターンが始動する。この加圧の程度は、膝を伸ばした行程が大きいほどより強く加圧できる。言い換えると、『膝を伸ばし始める前にできるだけ曲げておいた方がより強く加圧できる』ということである(上体を持ち上げる落差が大きくなるため)。だから、左右のターンを切り換える時に、『山側の脚(次のターンの外脚)をできるだけ曲げて着地させたほうがいい』ということになる。
 
 さて、このテクニックには、「緩斜面でのターンや浅いターンの時のように、体が雪面に対してあまり傾いていない時はどうするのか?」という疑問がある。しかしながら、その場合はあまりこの操作の必要がないのだ。なぜなら、そういうターンでは体の前傾はあまり必要ないし、さらにスキーをあまり強く加圧する必要も無いからである。このテクニックはしっかり前傾をとりながら強く加圧するためのテクニックであり、即ちより深いターンをするためのものである。
 それでも、緩斜面にセットしたポールを速く滑りたい時などは、加圧を強める必要がある。それについては『テクニック14 スキーを平行に横方向へステップする』を参照してもらいたい。
 
 
2-4■ステップターンについて
 
 中・上級者がよく理解できてないターンの一つにステップターンというのがある。ステップターンとは、切り換え時にスキーを踏みかえる(ステップする)操作が見られるターンの事で、簡単に言えば、交互操作をしていれば全てステップターンと言えるのである。
 ところが、ステップターンはスケートのように斜め前へ大きくスキーを踏み出す技術、と思い込んでいる人は、テクニック10で説明したように「空蹴り」を行ってしまうのである。ステップターンは、スケートのようにハサミ状ではなく横へ平行にステップしてもいいという点、また、横にではなくその場にステップするだけでもいいという点を理解しておく必要がある。
 私が教科書とした「究極のアルペンスキーテクニック」の著者・見谷昌よし(漢字:衣へんに喜)氏はその本の中で次のように述べている(注:ウムシュタイクというのはドイツ語で踏みかえ、即ちステップのこと)。
 「パラレル系とウムシュタイク系の違いは非常に微妙である。私の理論ではパラレル系もウムシュタイク系も人間機能から考えて、いかなる動作も踏みかえの動きからなり立っている。四肢間相互運動の原理からみるとすべてのテクニックはウムシュタイクである」さらに「しかし世界の理論家の間では踏みかえの動きがあっても両スキーをパラレルにして滑るテクニックをパラレルシュブング(ウェーデルンも含む)とする(注:シュブングとはドイツ語でターンのこと)。そして踏みかえの動きが明確に行われたテクニックをウムシュタイクシュブングとして区別している」
 実に見事な洞察である。この見谷氏の言葉は、ステップターンの意味を非常に明確に示していると言えよう。と同時に、パラレルターンからステップターンにいたるまで全ての操作・動きの基本が交互操作にあることを示唆している。
 
*ステップターンの目的は「加速」、「軌道修正」、「加圧」の3つ。
 さて、見谷氏の意見に従えばパラレルターンもステップターンの一部ということになるが、ここでは明確なステップ操作(踏みかえ・交互操作)が見られるものだけについて解説することにしよう。
 このステップターンには、加速する、軌道修正する、そして加圧するという3つの目的があり、その場に応じて使い分ける必要がある。
 「加速する」のは、低速域でスケートのように斜め前方へ蹴り出していく方法であるが、一般的にこれがステップターンの全てだと思っている人が多いようだ。競技の時はスタートダッシュに使われる方法で、しかしこれはあくまで低速域でのテクニックと理解しておいた方がよい。中・高速域になると加速するより、板をたわめる力を変な方向へ逃がしてしまって失敗する事が多い。
 2番目の「軌道修正」は滑っている軌道を横へ修正する為にステップするものでレース中のコース修正や、一般ゲレンデでは人を避けたりするのに有効なテクニックだ。
 3番目が『加圧する』目的で行われるステップターンで、板をより強くたわめるために行うものだ。片足を上げ、体重を1本の板に集中させ、さらに脚部を伸ばす運動を加えることでより強く加圧することができるのである。この場合、特にハサミ状にステップする必要はなく、むしろスキーを平行にしたまま横へステップするか、脚を開かずにその場でステップしたほうが空蹴りなどの失敗がない。
 
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